神魂導書 ーシンコンドウショー

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パリッ 乾いた音がこの世界に響く。 口のなかにほのかな甘味が広がり、思わず頬が緩んでしまう。 板チョコを口に運んでいると、後頭部に何かが当たり、コツンと音がする。 「いったぁ~!」 3割増しの声で反応し後ろを向く。 風がそよそよと頬を抜けていく。 もう9月だというのに、太陽は強く照りつけていて、思わず目をギュッとつむってしまう。 「何やってんだよバ~カ。」 心の奥に響く低い声。 ふわりと鼻を抜けていく、柔軟剤の匂い。 逆光なのに、声と匂いで誰だかすぐにわかった。 「別に何もしてないし。」 そう言いながらベンチの端による。 当然のように空いた場所に腰を下ろす影。 「なんだよ、そのチョコ。よこせ。」 手を伸ばしてくるので、振り払った。 「やだ。誠也なんかにあげないよ。」 いいながらチョコを頬張る。 誠也はニィッと笑ってコーラをごくごくと飲む。 「ねぇ、コーラ飲みたい。」 「チョコと交換。」 チョコをパキッと折って、渡す。 「ん。」 「じゃあ...はい。」 差し出されたコーラのペットボトルのキャップをあける。 プシュウ、と気の抜けた音が響く。 口をつけると、誠也が 「一口だけな。」 と言ったが無視して頬に溜め込む。 プハァと息を吐くと、誠也は呆れたように言った。 「はぁ、お前一応これ間接キスだからな?」 「別にいいし、誠也も気にしないっしょ?」 「まぁ、そうだけど。」 「ならいいじゃん。」 そう言ってコーラを一気に飲み干した。
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