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逢沢美奈子は、今日死ぬ事にした。
小5からいじめられている美奈子は、もう少しで中学生だ。だが、いじめっ子のリーダー、中田桃華が同じ中学に進学する。
いじめはとにかく酷く、授業で使うノートに「死ね」「ブス」などの悪口を書かれたり、机の中に死んだ虫を入れられたり、帰りに靴を履こうとしたら、泥水が入っていたり、掃除の時間に「顔をきれいにしたらブスが治るよ」と使った雑巾で拭かれたり…と、散々な嫌がらせを受けて来た。
親にも先生にも相談したが、先生はいじめをなかった事にしたいらしく、何もしてくれなかった。
親は、弟の総一郎が中学受験をするため、美奈子の事などどうでもいいようだ。
昔から両親は、美奈子よりも弟ばかりを可愛がってきた。
父方の祖父が男性至上主義者で、美奈子が産まれた時は、「なぜ女なんだ? 次は必ず男を産め」と母に言ったらしい。
祖母はすでに他界しているため、母の味方はおらず、今では、男尊女卑の考えを引き継いでしまった父の言いなりに。おかげで美奈子は、味方がいない。
マンションの屋上で、満月を見ながら、美奈子は涙を流した。
一歩ずつ、端まで歩いて覚悟を決める。
幼稚園から一緒の男の子がずっと好きだった。
もし彼が味方でいてくれたなら、こんな悲しい選択をしないですんだのだろうか?
美奈子は、屋上から身を投げた。
ああ…そうだ、死ぬ前に何か仕返ししてやれば良かった。
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