愛を教えてくれた神は今日もとなりで愛をささやく

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湊人は蓮菜と蓮菜の部屋にいた。 蓮菜の部屋は、ハートのクッションやぬいぐるみがベッドの上に乗っていたり、勉強机の上には、ねずみのキャラクターのペン立てや、アクセサリーケースなどが置いてあり、可愛い女の子の部屋という印象が強かった。 蓮菜のベッドに二人で座る。 「それで? 湊人が言ってた、悪魔に殺されるって、どういう事?」 「あ、うん…。その、夢の話なんだけど…」 「夢?」 「うん。夢の中でオレは、前世でいじめられて自殺した女の子なんだ。自殺した時に悪魔が契約を持ちかけてきて、 『魂をもらう代わりにおまえの願いを叶えてやる』と言ってきた。オレは『もう一度自分自身に、今度は男の子として生まれ変わり、いじめっ子に復讐したい』と言った。 生まれ変わったオレは、いじめっ子に復讐した。 けど、悪魔は『復讐の仕方がぬるすぎる』と言いに来た。人間の不幸や悲しみを食べ、それを力とする悪魔は、いじめっ子の感じる悲しみが少なすぎると怒った。代わりにオレの不幸や悲しみを食べるって言ってきた。 オレの中に入った悪魔のせいで、不運が舞い込んできている。もしかしたら、不運のせいで事故にあったり、病気になって死ぬかもって言われた…っていう夢なんだけど…」 蓮菜は「そう…」と頷く。 「その悪魔の魔力が、湊人が悲しみを感じると増えていくって事かな?」 「う、うん」 「湊人。それは夢じゃなくて、実際に起こった事でしょう?」 「え? なんでそう思うの? 前世とか、悪魔とか信じるの?」 「…信じる…。私も前世の記憶があるから」 「え?」 「私も逆行転生したの。前世では、神木蓮って男の子だった。なぜか今世では女の子だけど…。湊人の前世は、逢沢美奈子でしょ?」「なんで…。蓮菜はオレが美奈子だったってずっと前から気づいていたのか?」 「私が前世の記憶を思い出したのは、湊人が中田さんに殴られて倒れた時から…。あの瞬間、前世の記憶が流れ込んできたんだ」 「そうか…オレは生まれた時から記憶があったよ。言ってくれたらいいのに…」 「湊人が美奈子だった頃の記憶を持ってるなんて知らなかったし。前世の記憶がないのに、変なこと聞かされても、戸惑うだけでしょ?」 「ああ…確かに…」 「湊人…私は、美奈子に悲しい選択をさせた事、ずっと後悔してた」 蓮菜は遠い目をして、美奈子が自殺する前の事を話し始めた。
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