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小6の冬。
美奈子へのいじめは酷くなる一方だった。
ある日の放課後、蓮は教室で1人泣いている美奈子に声をかけた。
「美奈子」
「蓮…。なに?」
「ごめんな…俺…美奈子のことかばってあげれなくて…」
「蓮も、他の人と一緒だよね。私をかばったら、男子女子関係なく桃華に嫌がらせされるもんね。私と仲良くすれば、クラス中から仲間外れにされる。蓮にも、私をかばう勇気なんてないんだ」
「美奈子」
「もういいから。放っておいてくれる?」
「美奈子…俺…美奈子が好きだよ」
「うそ言わないで。私を好きになる人なんていないの。この世にはね。お母さんも私の事嫌いだもん」
「美奈子。俺、本当に美奈子が好きだよ。幼稚園の時からずっとね」
「…もっと早く言ってほしかったな」
「ごめん…。言うの恥ずかしくて…」
「うそ…ありがとう。嬉しい。私も蓮がずっと好きだったの」
「そっか」
蓮は美奈子の頭を撫でた。
「俺は美奈子の味方だよ」
美奈子は嬉しそうに笑った。
次の日、蓮が高熱を出して学校を休んだ。
夕方になって、美奈子が家に来た。
「ゴホッ…美奈子?」
「蓮は私を好きって言ってくれたけど、それは桃華に言われてからかうためだったの?」
「はあ?」
「今日桃華に言われたの。
『それはあんたをからかうためよ?
蓮くんは私の事が好きだって言ってたもの。
「美奈子をいじめられる?」って聞いたら、「うん」て言ったもの。
告白して「本当は嫌いだよバーカ」って言うつもりだったのよ? でも蓮くんからそんな事言われたらあんたもかわいそうかなって、桃華があらかじめ教えてあげたの。ウソだと思うなら本人に聞いてみたら?』って」
「…ん…ゴホッ…あいつがそんな事を?」
「蓮、違うよね? 私を好きって言ったのは、味方だって言ってくれたのは本当だよね?」
蓮は「当たり前だろう?」と言おうとしたが、声がうまく出せない。
「ゴホッ…ハアッ…ぅ…ゲホッ」
胸が苦しい。呼吸がうまくできなくなる。これ以上、ここで話しをするのは無理だ。
蓮は、「みな…ごめ…」
と一言言ってドアを閉めてしまった。
その夜、蓮の熱は高いままなかなか下がらない。だが、美奈子に電話しなければと思った。ケータイを取ろうとしたが、突如、呼吸困難に陥り意識を失ってしまう。
気がついた蓮は病院にいた。
「蓮…」
「母さん。俺…なんで」
「蓮、昨日の夜、意識を失ってね。肺炎だって」
「そっか。ケータイどこ? 美奈子に昨日のことちゃんと話さないと…。誤解してるから」「…蓮…美奈子ちゃんは…昨夜遅くに、亡くなったのよ」
「亡くなった? なんで…」
「…自殺みたいね。遺書はなかったんだけど…いじめられていた事もあって、警察は自殺でしょうって」
「…俺のせいだ…」
「蓮?」
「昨日、俺が胸が苦しくて思わずドアを閉めちゃったから…。あの時、一言、好きなのは本当だよって…言えば良かったんだ。俺のせいで…」
「蓮…」
「うわぁぁぁぁ!」
蓮は泣き叫んだ。
「蓮…」
母も泣きながら、蓮を抱きしめ、背中をさすってなだめた。
葬式にいくと泣いている桃華とその取り巻きたちがいた。
「わたし達のせいで美奈子ちゃんが死んでごめんなさい」
母も弟も泣いていた。
「私があの子が助けを求めているのに応えてあげていたら…」
「オレも姉ちゃんに無関心だった」
父も涙を我慢しているような顔をしていた。
「蓮くん」
「おばさん」
美奈子の母、美紗子は、蓮に手紙を渡した。
「これ、美奈子からあなたへの手紙なの」
「遺書はなかったって発表は?」
「美奈子があなただけに読んでほしいって気持ちを、守ってあげたくて」
蓮は、手紙を読む。てっきり、裏切られた事への恨みつらみが書かれていると思ったが違った。
『蓮へ。もし、生まれ変われたなら、またあなたに逢えたなら、その時は私を好きでいてほしい。私を愛してほしい』
蓮は静かに涙を流した。
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