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 僕はゲームをすることも諦めて、スマートフォンを机の上に置き、ベッドの上に横たわって目を閉じる。すると、なぜか真琴の姿が浮かんでくる。真琴の綺麗な瞳が、艷やかな長い髪が、潤いのある艶めかしい唇が、僕を掴んで離さない。僕は目を開けて首を強く横に振り、自分にしっかりと言い聞かせる。真琴は恋すべき相手ではないと。それでも目を閉じると、やはり真琴の姿が浮かんでくる。形のよい大きな胸が、キュッとくびれた腰が、スラリと伸びる長い足が、僕の頭の中にくっきりと明確に写し出される。どうやら僕は、目を閉じていることすらできないようだ。  そのとき、誰かが僕の部屋の扉をノックした。 「はい、どうぞ」  僕が答えると、扉がゆっくりと開き、真琴が顔を覗かせた。それから真琴は僕のベッドの脇までやってくると、床に腰を下ろす。僕はベッドの上で上半身だけを起こし、 「真琴ちゃん、どうしたの?」  と尋ねた。 「ねえ、啓介兄ちゃん。星を見に行こう」 「星? 星ならわざわざどこかに見に行かなくても、窓を開けたらいくらでも見えるよ。今日はよく晴れてるし、雲も少ないからね。何なら庭に出てみるといい。そうしたら、きっと空一面に広がる星を見られるはずだよ」  僕は言ったけれど、真琴は首をゆっくりと横に振る。 「窓を開けたり、庭に出たりしたら星が見えるのはわかってる。だけどそういうことじゃないの」  真琴の言わんとすることがよくわからず、僕は首を捻る。 「一体どういうこと? どこに星を見に行くつもりなの?」 「秘密基地」  真琴はそう答えると、ニッコリと笑った。だけど、今度は僕が首を横に振る番だ。別に、真琴に意地悪をしてやろうとかそういうつもりはない。ただ、そこにはそれなりの理由がある。 「こんな夜中に森の中に入るなんて危なすぎるよ。昔は森の中もそれなりに手入れがしてあって、道もちゃんとしてたけど、今は誰も手入れしてないから、雑草が荒れ放題になってる。そんな中を懐中電灯一つで進むのは止めておいた方がいい。ここに住んでる僕たちでさえ、そんなことしたりはしない」 「少しくらい危なくったって、私は平気よ。私が覚えてる限り、秘密基地までの道に崖みたいな危ない所はなかったはずだし、多少怪我をすることが会ったとしても、死んだりすることはないでしょう?」  そんな真琴の言葉に僕は思わずため息を吐いた。 「君は森をあの甘く見すぎているよ。あの森は君が思っているよりもずっと深いんだ」
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