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1⭐️女神あらわる
銀行員にとって月曜は魔の一日だ。
その月曜を無事に終え、安堵の空気が店内に流れ始める。
「ほっしーもメシ行くよな?」
「あー今日はやめとく。また今度誘ってなー」
入行四年目の春を迎えたオレ、星川 光輝。
人は皆、オレをほっしーと呼ぶ。
「ほっしーくん、もう!なんでゴハン行かへんのー?」
「ああ、すんません、次回はお判しますんで!」
そのまま逃げるように職場を出た。
外は日没していて薄暗い。
本当はメシに行きたいところだったが、大学時代のバレー部の先輩の結婚式に出席したばかりで金欠だ。
昨日だいぶ飲んだし、今日はこれぐらいにしとくか、と職場の近くのスーパーで、カフェオレのペットボトルを手に取ってレジへ向かう。
金欠のときはコンビニよりスーパーに限る。
オレって金銭感覚、磨かれたスーパー銀行マンだな!スーパーマーケットだけに!
心の中で自画自賛するがすぐに虚しくなる。
先輩の奥さんキレイやったなあ。
あんな奥さんが待っとったら、うち帰るのも楽しみやろなあ。
オレもそろそろ身ぃ固めるか?
いやいや、今カノジョもおらんし!
と心の中でノリ突っ込みすると、さらに虚しくなる。
「あの、すいません、このトマトって入荷の周期って決まってますか?」
若い女子が、店員になにか尋ねている。
「あと、この卵の生産者さんの連絡先教えてもらえませんか?」
なにげに見ていると、ふと彼女と視線がぶつかり、心臓がドクンと拍動する。
やばい…と目をそらし、買うつもりもない目の前のパプリカを手に取ってみる。
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