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あなたは まさに 俺の
「・・・さようなら」
日が沈む時刻に、あなたはここを去っていった。
そして俺も、日が沈むと同時に消えてしまう。
力を使ってしまった俺は、光の粒と成り果てる。
だけど、後悔していない。
陽太は、茜からの波長が弱まっていくのを感じた。彼女に愛されたことを、最後に思いきり心を込めて噛み締めた。ここにきて、涙が頬を伝った。
だが、冷たくはない。
肌が、透けていくのが分かった。
もはや、陽太に視覚や触覚はなかった。
すべてが粒となっていく。
粒は、風に吹き消される前に、一瞬だけキラリと輝いた。
そして消滅した。
失いそうな思考のなか、思った。
俺が一番輝けたのは、この一年だ。
何十億年も生きてきて、この一年だ。
陽太の体は、音も立てずに、風という消しゴムに次々と消されていった。
最後に、写真をつまんでいた右手の親指と人差し指が、ふっときらめいた。
丸く輪になった絆創膏と、写真とが、その場に残って宙を舞った。
陽太の存在をこの世に示す二つのものは、やがて地上のどこかへと吹き飛ばされて、見えなくなった。
彼の思いが込められたままに。
茜さん。
あなたは
まさに
俺の
太陽でした。
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