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夜の世界
(結局、分かんなかったなあ・・・)
陽太は、憮然とした顔つきでシュー皮にかぶり付いた。
僕の君は、どこにいたんだろう?
あの建物の中の、いったいどこに?
とっぷり暮れて、ぽっかりと月の浮かんだ濃藍色の空を、陽太は見上げた。
シュークリームを食べ終えると、次はエクレアに手を伸ばした。二つとも似たような味がする。
(うーん・・・ん?)
チカチカと瞬き始めた星や、主役の座で夜空に君臨する月を見ているうちに、陽太はあることに気がついた。
星も月も、それぞれ光を放っている。
特に、点のようで一つ一つは目立たないが、満天に散りばめられている星。
あれは・・・。
「俺の仲間だ・・・」
陽太は、なにかに引っ張られるようにすうとベンチから立ち上がった。
血が騒ぎ、胸が高鳴る。
「知らなかった・・・。こんなにたくさん、俺の仲間がいたなんて」
そして、月。
その光は、世界を照らすにはあまりに儚くて、それに温かくもなかった。
でも・・・いや、だから。
「あれは、俺の影だ・・・」
陽太は、何者かが心の弦を撫でていくのを感じた。それに伴い、全身に波打つように鳥肌が立っていく。
寒くもないのに、陽太は思わず、二の腕を互いにぎゅうとつかみこんだ。
陽太には、夜の世界など今まで存在しなかった。
だからこそ、余計に・・・。
「・・・すげえ」
うめくようにつぶやくと、あとはもう息を呑んで、ただ呆然と天体に心が吸い付けられるばかりだった。
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