出会う(2)

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出会う(2)

「あのっ・・・」  陽太は、駆け出しそうになる全身を、すんでのところで押し止めた。  それから、茜の正面に歩いて進み出ると、愛想良く微笑んだ。 「俺、日輪陽太って言います。あの・・・迷惑かもしれないですけど・・・俺からもお願いします。いろいろ教えてください」  陽太は、丁寧に頭を下げた。 「え・・・ええ・・・」  茜は、穴でもあったら入りたいというように、目を泳がせて肯いた。 「本当に? ありがとう!」  陽太は、ガシッと茜の両手を握り、ブンブンと上下に振った。  茜は、陽太の勢いに圧倒されながら 「じ、じゃ、来週の・・・えっと、火曜の二時に・・・また、はい」 と、しどろもどろに答え、自分から陽太の手をほどいた。  それから、何事もなかったかのように、再びスーパーの袋から買ってきたものを取り出し始めた。 「茜、よろしく頼むよ。悪いね」  昇の駄目押しに、茜は、快諾とは程遠い声色で 「うん・・・」 と返した。  昇は、苦笑するにも苦笑しきれず、ただ肯いた。  陽太はというと、夢でも見るようにうっとりと目を輝かせていた。  生唾が喉を通り、ごくんと音が鳴る。  唇を、意識してぎゅっと締めた。でないと、あまりの喜びに叫びだしてしまいそうだった。  体もムズムズした。  ジャンプして、走って、転げ回りたい。  そんな高揚した気分を、陽太は拳を握ってかろうじて抑えた。  そうして、自分を凝視する陽太に、警戒に近い眼差しを投げる茜を、改めて目に焼き付けた。  この人だ。間違いない。  陽太は、確信した。  俺が探してた人は、  あの波長を持つ人は、  この人だ!   やっと会えたんだ!  陽太は、弾む自分の心だけに集中していたから、あることに気がつかなかった。  茜の視線。  自分を虜にした眼差しとは似ても似つかぬほど、この時の茜のそれが、荒みきって閉じられていることに。
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