バイト初日(1)

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バイト初日(1)

「これで、一通り説明は終わったけど、質問は?」  茜は、エプロンを付けた腰に手を当てて、陽太に尋ねた。 「大丈夫です! 分かりました!」  陽太は、必要以上の元気な声で答えた。なにしろ、茜に仕事を教えてもらう記念すべき第一日目だ。張り切るに決まっている。  そんな陽太とは対照的に、茜はあくまで冷静だった。 「君、バイト何時まで?」 「えっと、二時から・・・六時までです」 「そう・・・。まあ、変わってなければ、混むのは三時くらいだから。それまでかっちゃんがいろいろケーキを焼き上げるから、出来上がったらそれを持ってきて並べてね」 「はいっ」 「うち、一番混む時間って三時なのよねえ・・・。おやつの時間なんていうけど、あまりに単純・・・。あと、夕方にちょっと混むかな」 「あの、茜さん」 「ん?」 「かっちゃ・・・って?」 「あ・・・あら、ごめんなさい」  茜は、恥ずかしそうに笑った。 「かすみさんのこと。私、かっちゃんって呼んでるの」 「へえ・・・。あだ名ですか?」 「そんなに大げさじゃないよ。でも、彼、うちに住み込みで働いてるし、家族みたいなものだから」 「フーン・・・」  茜さんと一緒の家に住んでいるのか。  なんて羨ましい。  そう思った陽太は、即座に次のような質問をした。 「俺は、住み込み、だめですか?」  それに対し茜は 「は? 寝ぼけてるんじゃない?」 とは、さすがに言えず 「バイトじゃ無理だよ。かっちゃんは正社員で、ゆくゆくは店を継ぐかもしれないもん。ていうか、お父さんはそれを望んでるの。だから、住み込みだけどね」 と答えた。
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