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バイト初日(2)
「うーん・・・」
「君は?」
「え」
つまらなそうにうつむきかけた陽太は、はっとして顔をあげた。
「聞いてなかったけど、学生さん?」
「え、いいえ」
「じゃ・・・フリーター?」
「まあ、そうです」
「フーン・・・。ねえ」
ここで急に、茜の表情に影が落ちた。
「就職とか・・・考えないの?」
声のトーンも、先ほどとは打って変わって、小さく暗いものに転じている。
「え? 今のところ、全然」
陽太は、あっけらかんと首を横に振った。
「フーン・・・。怖くないの?」
「なにがですか?」
「定職を持たない・・・っていうか、持ってないこと」
茜は、探るような、かつ、恐れるような視線を陽太に向けた。
陽太は「怖くないです」と思ったが、そうは言わなかった。
言えなかった。
茜の言いたいことが、陽太にははっきりと分かったからだ。
『私は、怖くてたまらない』
茜は、そう訴えていた。
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