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キャンパスでランチ(2)
「陽太君て、甘党?」
陽太が選んだ三つの菓子パンと、イチゴ牛乳を見て、茜は尋ねた。
「そうっすねえ・・・。ブラックのコーヒーとか、苦いものはダメですね。まずい、まずい」
陽太は、おいしそうに菓子パンの一つにかぶりついた。唇の端やてっぺんに粉糖がついたが、それもきれいに舌でなめとった。
「でも、全然太ってないね」
「そーすか?」
「で、用ってなに? 私、このあと、することあるから」
茜は、さっさと陽太の相手を済ませて、自分のするべきことに手をつけたいと思っていた。そのため、せかすような口調で陽太に質問したのだが
「することって?」
陽太の受け応えは、あくまでマイペースであり、茜の身の上など少しも気にかける気配がなかった。
「勉強・・・。今、就職活動中だから」
茜は、自分がからかわれているような気分になり、少し不快な視線を陽太に向けた。
「ああ、そうだ。茜さん、就職のための勉強、大変なんですよね」
陽太は、やっとそのことを思い出したようだった。少なくとも、茜にはそう見えた。
それで茜も、素直にありのままを話した。
「うん・・・。公務員試験は、特にね。すごく難しいし、量も多いし。いやになる」
飲みかけのコーヒーの缶を両手で包むように持って、茜はハーッとため息をついた。
「助けが、いるんじゃないすか」
「助け?」
陽太の言っている意味がよく分からず、茜は眉をひそめた。
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