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キャンパスでランチ(3)
「勉強は一人でやるものだから、助けって言っても・・・」
「付き合います」
茜は、形の良い眉をますます寄せて、陽太を見た。陽太は、クリームが中からはみ出そうなパンを、どうにかうまく噛みちぎろうと苦戦していた。
「付き合う?」
パンを何度も咀嚼して、ようやく飲み下すと
「分かんないとこ、教えますよ」
陽太はむせながらそう言うと、急いでイチゴ牛乳を流し込んだ。
いっぽう茜は、陽太の話に、すっかり呆れてしまった。
「陽太君、分かるの? っていうか、自分の言ったこと、分かってる?」
「はい」
「私が、どういう勉強してるかも?」
「いや、それは知りません。でも、大丈夫! 俺、アッタマいいですから」
そしたら、なんでフリーターなのよ。
というツッコミが、茜の頭にぱっと浮かんだが、もちろん口には出さなかった。ただ、やれやれと肩をすくめた。
(まあ、一回私のやってる問題を見れば、自分には無理だってことが分かるでしょう・・・)
そう心の中でつぶやきながら、茜は小さく首を縦に振った。
「それにしても、いい天気ですねえ! 木漏れ日がまぶしい!」
茜の胸中など少しも気にせず、陽太は無邪気に目を細めた。
「明日も、晴れるみたい。今日は、きれいな夕焼けになるかも」
茜は、初めて明るい声を出した。
「夕方ね、帰る時、いつも西日の射すところを帰るんだけど、夕陽がよく見えて、夕焼けの日なんかすごくきれいなんだよ」
「へえ・・・。いいですね」
「うん」
茜は、柔らかく微笑んだ。
今までの、どこか警戒した態度とは打って変わって和んでいる。
そんな茜を見ると、陽太も、少し肩の力が抜けた。
なんというか、ほっとした。
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