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全知全能だから(1)
茜は、隣の椅子に腰掛けた陽太に、教養試験模試の一つを差し出した。
「私、こういう勉強をしてるの。あと、専門試験ていうのが別にあるけど、とりあえず、これやってみて。どういうのか、分かるから」
「はい。・・・マークシートか」
陽太はシャーペンを取り上げると、一問一問、さっさとカンバスに筆をおくようなスピードで、一から五のどれか一つに丸を付けていった。
茜は、それを横目で見て訝しんだ。
流れるように解答しているが、設問をちゃんと読んでいるのだろうか?
理数の問題にしても、計算を一度もしないで回答している。
本当に、からかってんのかな、この人。
怒るよりも呆れて、茜は、自分のノートを広げた。
そして、茜が三行も書かないうちに
「できましたよ」
そう言って、陽太が茜に模試を押しやってきた。始めてから、五分も経っていない。
「ずいぶん早くない? 制限時間九十分だよ、これ?」
「ん? でも、できちゃったから」
茜は眉をひそめて、赤ペンでクルクルと答え合わせをしていった。
初めのニ、三問の丸は、偶然だろうと思った。
しかし、五十問・・・いや、陽太は、選択問題のところも全問解答していたから、約七十問。
すべて正解だった。
「・・・まあ」
茜は、目を真ん丸くして、模試の答案を持ち上げた。
それから、そろそろと陽太に視線を移した。
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