全知全能だから(2)

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全知全能だから(2)

「ね? 俺、頭いいでしょ?」  陽太は茜に、にかっと笑ってVサインをしてみせた。 「信じられない・・・。これ、なに? トリック?」 「違いますよ。俺、全知全能だから」 「もし、これが実力だったら・・・もし、よ? 君、東大だって首席よ、きっと・・・」 「そいつらより、ずーっと上だと思いますけど」  不満そうに口をとがらせた陽太に、茜は思わず笑った。 「じゃ、じゃあさ。これなんて分かる?」  茜は、別の模試を取り出して、問題の一つを陽太に見せた。  すると陽太は 「これ? うん。答えは六十だ」 と、選択肢もろくに見ずに、ズバリと正解を弾き出した。 「そう! でも、なんでそうな・・・君、どうやって計算したの?」 「ここっすけど」  陽太は、己のこめかみのあたりを指の第二関節でコンコンと叩いた。 「あの、私にも分かるように・・・教えて、くれない?」 「もちろん」  陽太は、一枚のメモ用紙に計算式を書き出した。 「どこから説明しましょう? 九九は知ってます? そこから説明・・・」 「いりません! あ、あと、二次方程式も分かってるから」 「そうか・・・。あのですねえ」  こんな調子で、茜はそれまでよく分からなかった問題の解答を、陽太に次々質問していった。陽太は、こんがらがった紐を解きほどいていくように、一つ一つ丁寧に教えてくれた。  気がつけば、もう太陽はだいぶ西に傾いていた。
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