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夕焼けの見える道(2)
茜は、空から陽太に目を転じた。
「ね」
茜は思った。
陽太は、よく笑う男だ。
しかも、魅力的なのにあくまで自然体。
こんな笑顔で誘われると、とても断れない。
そう思った瞬間、茜の頭に一つのことが閃いた。
「じゃ、良かったら晩御飯ごちそうするけど、どう?」
「いいんすか? やったー!」
陽太は、ここが図書館であることを忘れて、大声で喜んだ。
しかし、茜とて今は、陽太をとがめる気にはならなかった。
「買い物にも行くけど、いい?」
「あっ、行きたい! お供します!」
「じゃ、お礼に、陽太君の好きなもの作るよ。作れるものだったらだけど・・・」
「えっ! じゃあ、クリームの入ってるやつがいいな」
「・・・甘いものばっかりじゃ、栄養偏るよ」
二人は、茜の自転車がとめてある大学内の駐輪場にきた。茜は赤い自転車の鍵を外し、ガコンとスタンドをあげた。
「二人乗りしたら? 俺が運転するから、茜さん、荷台に乗ってください」
「歩きましょう」
茜は、陽太の提案をあっさり却下した。
そして、陽太ががっかりするより先に
「そのほうが、夕陽もゆっくり見られるでしょ」
と理由を付け足した。
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