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団欒(2)
「クラスの女子にいろいろ聞かれんだけど、俺、なにも知らねーし、テキトーに話してる」
「かわいい顔してるもんね。芸能人みたい」
「陽太君ね、頭もいいんだよ。公務員試験の問題、スラスラ解いちゃうんだもん。私、今日、たくさん教えてもらっちゃった。ねっ?」
茜が嬉しげに話すのを聞いて、晴子は「へえー」と感心した声を出した。
「そうなの? すごぉい。じゃ、大学も有名な所に行ってるの? このへんだったら、ええと・・・」
「いえ、フリーターです」
「え」
晴子は、肩すかしを食らった表情になりかけたのを、かろうじて普段どおりのそれに留めた。
そして、努めて愛想良く言った。
「え、なんで? 頭いいんでしょ? もったいない! せめて大検受ければ?」
「興味ないっすね」
「でも、フリーターのままで過ごす気はないんでしょ?」
晴子は、当惑気味に質問を続けた。
陽太は、あくまでマイペースだった。
「うーん、あんまり考えてないんです。今が楽しいから」
「夢とかないの? 将来の夢」
しつこく食い下がる晴子に、陽太は不敵の笑みを浮かべて
「夢ですか? もう、叶ってますから」
と答えた。
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