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波長(2)
(・・・あっちにいる!)
陽太は、全力疾走した。波長が消えてしまう前に、あの人を見つけなくてはならない。波長はずっと続くわけではないことを、陽太は知っていた。
長くても十五分が限界。
タイムリミットは、十五分だ。
陽太は、走っているうちに息切れしてきたことに気がついた。呼吸が苦しく、喘いでいる自分がいる。
でも、止まるわけにはいかない。
止まってなど、いられない。
ああ、でも・・・。
(人の足って、なんておせーんだ・・・)
いつものように、波長はだんだんと小さくなっていった。
夕焼けが、桃色から淡い青へと変化するにつれて、波長は先細っていく。
(間に合わねえ!・・・)
陽太は、突然走るのをやめた。頬からあごにまで伝っている汗も拭わずに、眉間に皺を寄せつつ、深呼吸を一つした。
(あんまり使わないつもりだったが・・・)
陽太は、両腕を素早くまっすぐに横に突き出した。スウと息を吸い込んで、軽く大地を蹴りつける。
次の瞬間には、何キロメートルも離れた場所に移動していた。
(やっぱり、光は早い)
エッヘンという感じで唇の端をつり上げてから、陽太は、はたとあたりを見回した。
ここだ。
ここに、あの、眼差しの人がいるはず。
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