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「……ねぇ、なぎさ」
少しの沈黙の後、ほず枝がなぎさに聞く。
「あなた、まさか復讐なんて考えてないでしょうね?」
母の言葉に、なぎさは答える。
「そこまでは考えてないさ。ただ、あいつが俺たちにした事を思えば、それなりの誠意を示してもらわないと困るからな」
そう言ってなぎさはお茶をすする。
ところが、なぎさは言葉とは裏腹に復讐も考えていた。しかし、そのためにはそれなりに信用を得てからでないと意味はないと考えていた。なにぶん、財閥令嬢たる千穂の専属メイドという仕事はとても給料がいい。余裕で扶養から外れられる金額だ。復讐も何も、まずは家の生計を立て直す方が先だ。
これからの事を二人で話していると、
「なぎさーーっ!!」
静寂を打ち破るように大きな声が響き渡る。驚いたなぎさが入口の方を見る。外からの光で姿がよく見えないが、その影は見覚えのあるものだった。
「みさき、なんでお前がここに」
「あら、みさきちゃん」
親子そろって口にする名前。そう、そこにいたのはさっきなぎさが置いてきぼりにした少女だった。
「いや、なんでって……。なぎさ自分で言ったじゃない、荷物を取りに戻るって」
なぎさは呆気に取られた。確かに荷物を取りに戻るとは言ったが、わざわざ家にやってくるとは思わなかったからだ。
「あたしも手伝うから、まずはご飯食べましょ」
みさきはそう言って、手に持つコンビニの袋を差し出す。時間はお昼前という事もあり、みんなで食べる事にした。中身はとんかつ弁当がみっつだった。
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