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「悪いわね、みさきちゃん」
なぎさたちはお弁当を食べながら、なぎさが今どこで何をしていて、なぜ今日戻ってきたのかなどを話した。
「へぇー、金持ちの家の使用人ね。また思い切った事したわね」
驚いてはいるのだろうが、意外にもみさきの反応は冷静だった。さすがに幼馴染でなぎさの事もよく理解しているという事だろう。
「住み込みで働くのね。仕事の内容も聞いた限りは大変そうね」
「あぁ、場所も遠いし、夏休みに戻ってこれるかどうかも分からねえ」
淡々と食事と会話が進む。
食事がすむと荷物の整理だ。ほず枝は荷物を入れる段ボールを近所にもらいに行く。その間、なぎさとみさきが二人で部屋で荷物の選別を行った。途中で、以前流行ったコレクションを見つけて手が止まったりしながら……。
結局、荷物の選別に三時間かかった。
「悪いな、みさき。助かったよ」
なぎさは、みさきにお礼を言う。
「お礼はいいわよ」
対してみさきはすました顔で言う。
「今さら辞めてって言っても無駄でしょうし、あたしはおとなしく応援するわ。それじゃあね」
みさきは納得した様子で帰っていった。見送るなぎさとほず枝は改めてお礼を言うのだった。お互いにこまめに連絡する約束をして。
帰りの電車の中。なぎさは窓際に立って外を眺めていた。
幼い頃の屈辱的な光景を思い出しながら、おもむろに髪を束ねていたゴムを外すと、なぎさは改めて強く心に誓う。
(あの時の恨み、必ず晴らしますよ。覚悟していて下さい……、千穂様)
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