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珍しくハイテンションの千穂に、なぎさは驚かされっぱなしだ。
気を取り直して、なぎさは会場の中をのぞき込む。視線の向こう、壇上の近いところにメイド長の姿を見つける。と同時に、隣に立つ白髪混じりの男性も気になった。
「久留里さんと……、横の男性は誰でしょうか」
「あの方は執事長の北見呼人さんです。お二方は執事とメイドの頂点、みなさんの憧れなんです」
なぎさと千穂が会場の入口で雑談をしていると唐突に声をかけられる。
「これは千穂様、ご機嫌はいかがですかな?」
……実にいやみったらしい声だ。
「あら、いらしていたのですね。半家さん」
振り返った二人のそばに、髪がぼさついた男性と禿げた小太りの男性がいた。誰か分からないなぎさに、千穂は紹介する。
「なぎささん、この方たちは我が家の税理士で、背の高い方が半家弥彦さん、低い方が増毛与一さんです。こうは見えてもお二方とも腕は確かですよ」
なぎさはなんとなく胡散臭く感じたものの、千穂が言うのならそうなのだろうととりあえず納得する。今後の高乃家での活動に支障が出ないように、なぎさは自己紹介がてらに挨拶をした。その丁寧な挨拶に、半家も増毛も感心した様子だった。
なぎさが挨拶をしている前後、禿げた小太りの男、増毛が食い入るようになぎさを見ている。それに気が付いた半家は、簡単に話を済ませてその場を去った。
「なんだったのだろうか」と立ち尽くすなぎさ。ところが、続けざまに不意に声をかけられる。
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