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「はい、もちろんです。申し遅れましたが、私、この度千穂様の専属メイドとなりました高山なぎさと申します。高乃のお屋敷でお世話になれます事、大変光栄に思います」
なぎさはぺこりとお辞儀する。千穂の家族は次々にさらりと流すように言葉をかけてくる。そして、もう時間なのだろうか、挨拶会の会場の中へ入っていく。だが、最後に段がなぎさに声をかける。
「なぎささんと申したのか。……なるほどいい眼をしておる。志の強さを感じる」
段はなぎさの全身を上から下まで見た後、少し口調を強めて言葉を続ける。
「千穂の事、くれぐれも頼みましたぞ。……じゃが、けして間違えぬようにな。それだけは気を付けて下され」
段はそう言い残して会場へと入っていった。千穂はにこやかになぎさによろしくと言ってくるが、なぎさは全てを見透かされたようで強張っているのだった。
こうして、新年度が始まるのだった。
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