第七話『女子高』

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 教室に入り、自分たちの席を確認する。生徒の座席は五十音順で配置されている。なぎさと千穂は、”たかやま”と”たかの”と音が近かったため、席は前後だったが、美々は一人席が離れてしまい、少々すね気味になっていた。そんな美々を、千穂は優しくなだめていた。  ここまで千穂の事を観察していたなぎさだったが、なるほど一般的なイメージのお嬢様とは程遠い感じだった。専属メイドを雇いながらも身の回りの事は自分でしてしまうし、積極的に使用人たちとは交流する。態度においても上から目線ではなく、しっかりと相手を見た親しみのあるもので、言葉遣い一つをとってみても柔らかなものだ。一般的な感覚を持とうとしている千穂の姿に、なぎさはとても感心していた。しかし、なぎさにとって千穂は恨みのある相手、決して心許してはならないと警戒を緩める事はしなかった。  無事に入学式とホームルームも終わり、初日はこれで終了である。特に問題はなかったものの、翌日は入学後最初の試験がある。学力はそこそこあるなぎさではあるので、この試験はさほど問題はないだろう。しかし、ふと美々の方に目を向けると、蒼ざめた顔でぶるぶると震える姿があった。……これはイメージ通り、勉強が苦手なタイプのようだ。 「大丈夫ですか、美々さん。もし、勉強が苦手なようでしたら、帰ってから一緒に勉強しましょう」  千穂の優しい顔と声に、瞳をうるうるさせて無言でこくりとうなずく美々。なぎさはそれを微笑ましく見ていた。  帰ろうと教室を出ようとするなぎさたち。  ……まさに教室を出た瞬間、不意に声をかけられる。 「お久しぶりですわ、高乃千穂」
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