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眼鏡をかけたメイド長はそう言って優しく微笑んだ。
改めてメイド長はドアの方を向く。そして、ドアを二度ノックすると、
「千穂様、高山なぎささんをお連れしました」
と言う。しばらくして、ドアの向こうから返事があった。
「久留里さん、ご苦労様です。お通しして下さい」
その返事を聞くや、メイド長は「失礼します」と言ってそっとドアを開けた。
メイド長となぎさが部屋に入る。財閥のお嬢様の部屋ではあるが、それほどの広さがあるわけではなかった。だが、部屋の中は隅々まできちんと整理整頓され、きれいに保たれた部屋はとても清潔感にあふれ、部屋の主の性格をよく表していた。
「高山なぎささん、よくお越し下さいました」
なぎさが声の方を向く。そこに立っていたのは、きらきら、ひらひらした服装に身を包んだいかにもお嬢様という姿の者ではなく、どちらかと言えば実に簡素な服装を身にまとった庶民の少女だった。背中の中ほどまである淡いピンクの髪の少女は、椅子から立ち上がるとなぎさたちの方へ静かに歩み寄る。そして、ある程度まで近づくと立ち止まり、口を開く。
「ようこそ、高乃家へ。私が高乃千穂です」
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