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千穂の言葉に、なぎさは特に驚かなかった。専属ではあるが、なにせなぎさと千穂は同い年である。ならば同じ学校に通うのは当然と考えていたからだ。
しかし、パンフレットを見たなぎさは震えあがった。
「あの……。すみませんが、これは?」
なぎさは恐る恐る問いかける。それに対して、千穂からは笑顔で返答がくる。
「はい、有名な女子高です。私は一般の学校を希望したのですが、お父様がどうしても聞きませんでしたので仕方なく通う事にしました」
「ひっ……!女子高って、え、あっ……、あわわわ……」
笑顔の千穂とは対照的に、青ざめて頭を左右に振り回すなぎさ。その様子を見た千穂は「面白い子」と思うのだった。
ひと通りの説明を終えたところで、千穂はなぎさに質問はないかと尋ねた。なぎさが「特にありません」と返すと、安心したような表情を見せる。そして、千穂はメイド長の方を見ると、
「では、私の方からの説明は終わりましたので、書類をお父様に届けて参ります。あとは久留里さんの方から使用人の仕事について説明がありますので、久留里さん、よろしくお願いします」
と言って、部屋を出ていった。
残されたメイド長となぎさ。なぎさがひと呼吸したのを確認すると、メイド長はおもむろに言葉をかけてくる。
「それではなぎささん、これより使用人、および専属メイドのお仕事について説明します」
その言葉に続いてメイド長は振り返る。その表情に、なぎさは恐怖した。
「覚悟はよろしいでしょうか?」
完全に目が座っている。固まった様子でなぎさは「はい」と返事をした。
……なぎさが説明から解放されたのは、それから三時間後の事だった。
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