第三話『制服合わせ』

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「では、あたしは別の用事がありますのでこれで失礼します」  千歳はようやく美々から手を放す。そして、 「千穂様、美々が粗相するようでしたら、遠慮なく叱って下さい。こいつは甘えん坊ですから」 と言い残して廊下を歩いていく。顔を鷲掴みにされた美々は、まだそこでしばらくうずくまっていた。 美々が落ち着いたところで、三人そろって制服の試着をおこなう。同じ学校に通う同級生となるので、もちろん制服はお揃いだ。普通に着こなす千穂、どことなく恥ずかしいなぎさ、ノリノリの美々。制服に袖を通した三人の反応はそれぞれだった。  制服のサイズに問題がなかった事で千穂はひと安心したのか、大きく息を吐くと椅子に座る。そして、なぎさたちに 「制服には問題はなかったようですので、残りの準備も進めておきますね。ふふっ、始業式が待ち遠しいです」 と言って、にこやかに笑うのだった。  試着を終えた制服はそれぞれで保管する事になり、美々ははしゃいだ様子で千穂の部屋を後にした。まだ部屋にはなぎさがいるのだが、その表情はなぜか暗かった。 「なぎささん、どうしたのですか?」  気になった千穂が問いかける。少し沈黙の後、なぎさが口を開く。 「千穂様、一つお願いがあります」
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