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なぎさは声をかけられる。しかもこの声、とても聞き覚えのある声だった。
「うげっ……、みさきか」
なぎさはいやいや振り返る。そこにいたのは赤い渦巻くような髪型が特徴の見るからに活発そうな少女だった。
彼女は和田みさき。なぎさとは幼馴染でごく近所に暮らす少女だ。
「うげっとは挨拶ね。久しぶりに会ったのにひどいわね」
みさきは、明らかに不機嫌な態度を示す。
「卒業してから連絡の一つもよこさないから心配したわよ。でもまあ、元気そうで安心したわ」
不機嫌な表情から一転、ほっとした表情に変わるみさき。その様子を見たなぎさは、
「悪かったよ。いろいろとごたごたしてて連絡できなかったんだ」
と詫びる。みさきはその言葉に納得したような様子だった。
「場所も遠いし、これからもあまり会えなく……、ってなに俺の居場所を教えようとしてんだよ!」
説明しようとするなぎさだったが、不意に鳴った通知音に困惑した。
『駅前の書店でなぎさ発見!』
仲間内に送られたSNSだ。これになぎさは焦る。
「バカヤロウ!今住んでる処は門限が厳しいんだ。今日は荷物を取りに戻って来ただけだ。お前らと遊んでる暇はないんだ!」
声を荒げるなぎさ。この反応は予想外だったらしく、みさきは驚き戸惑っている。みさきが固まっている間に、
「じゃあ、俺は行くからな。落ち着いたら連絡する」
なぎさはそう言って足早にその場を立ち去った。
残されたみさきはすっかり落ち込んでいた。けんかはする事はあったものの、ここまで拒絶に近い反応をされたのは初めてだったからだ。
不意に通知音が響く。音に気が付いたみさきは、ポケットからスマホを取り出した。
取り出したスマホの画面には、驚くほどの長文が認められていた。なぎさからのメッセージだが、別れてからそう時間は経っていない。みさきはこんな短時間で長文を打ち込む事に感心しつつ、何かを決意したような表情を見せるのだった。
その頃、なぎさは住宅地に足を踏み入れていた。
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