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第三話『制服合わせ』
翌朝の事、なぎさは持ってきたわずかな荷物を見て、今後必要な物を確認している。そのさなか、不意になぎさのスマホから通知音が響いた。
慌てて確認するなぎさ。どうやら母親からのメッセージのようだ。それもそうだろう。なにせ自分の子どもが自分のもとを離れて住み込みで働くのだ。それを心配にならない親がいるだろうか。
メッセージを確認したなぎさは、『大丈夫、何かあったら連絡する』とだけ返信して、朝の支度を始める。
支度を終えたなぎさは千穂の部屋に赴く。メイド長からの説明の後、戻ってきた千穂からご飯を一緒に食べようと誘われていたのだ。なぎさとしては断る理由もないので、快く了承したのだった。
互いに向かい合っての食事。この日の朝食は洋食。目玉焼きにソーセージ、ロールパンとサラダにヨーグルト。意外と普通のモーニングのような食卓だ。昨夜の食事が豪華だっただけに、なぎさは呆気に取られた感じになった。
「いかがされました?」
不思議そうに千穂が尋ねる。その声に我に返ったなぎさは、
「いえ、簡素な食事で意外だなと思いまして……」
と、正直に答える。それに対して千穂は、
「ふふ、そうかもしれませんね。」
穏やかに笑顔でうなずいた。
しかし、この食事、見た目は質素ではあるが、そこに使われている材料や調理法などはかなり計算されたものなのだ。それをなぎさは知らないし、千穂もあえて口にしなかった。
食事も終わるころ、千穂から話が切り出される。それは、四月から通う事になる学校の制服の話だった。昨日のメイド服を合わせてた時にサイズが判明したので、それに合わせて制服を注文したとの事だった。
「なぎささんに合うサイズの在庫があったので、三日後には届くと思います」
にこやかに話す千穂を前に、何かを悟ったなぎさだった。
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