Oblivion〜終の住処〜

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ママはわたしを"一人の客人"としてもてなした。 自分の娘と同い年の女の子を見て、どこか思うところがあったのかもしれない。ママは瞳を潤ませながら、わたしの自分の娘の思い出をしばらく語った。 一歳の誕生日の日のこと、初めて子役の仕事をした日のこと、ユウキと喧嘩した日のことを、時折笑顔も見せながら、けれど悲しげな表情で事細かにゆっくりと言葉を紡いだ。 ママの思い出話は娘として確かに胸を打つものがあったが、だが、そのたくさんの思い出のうちの一つとして、わたしの記憶に合致するもの(、、、、、、、、、、、、、)はなかった。(、、、、、) ママは何度も"あの子"という言葉を口にした。テレビのキャスターと同じだ。あの子がいないの、とママは繰り返した。 帰り際、玄関で靴を履いていると、どたどたと階段を下ってくる足音が聞こえた。振り返ると、ユウキが奇妙な顔をして立っていた。 「ユウキ、どうしたの? そんな顔をしないで、わたしはもう戻ってこないかもしれないの。だからね、ユウキ。あなたは」 わたしはそこでようやくはたと気がついた。違う。ユウキの瞳に点っているのは、別れ際の寂しさではない。わたしは、思わずぞっとした。 それは、間違いなく母に近寄ろうとする見知らぬ女(、、、、、)に対する敵意だった。 「誰だよあんた、お姉ちゃんのフリなんかしてんじゃねえ」
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