12人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
ママにもう一度会いたい、というわたしの願いを、意外にもあっさりとトウマは了承した。翌日の午後、わたしは一ヶ月ぶりにその部屋を出て、彼の車に乗った。
道中、不安は膨れ上がるばかりだった。昨日から……いや、本当はずっと前からなのかもしれない、何かがおかしい。
まるでテレビの中の彼らは、わたしではない他の誰かの話をしているみたいではないか。
わたしのことなど、すっかり忘れて……。
二十分ほど車を走らせると、見慣れた懐かしい景色が窓に映るようになった。
胸が不自然に高鳴り、わたしは落ち着かない気分になり始めた。
家まであと少しというところで、わたしはトウマに車を停めさせた。路上を歩く、ランドセルを背負った学校帰りの弟の姿を見つけたのだ。
「僕はここで待っているから。必ず戻ってくるんだよ」
わたしは頷いた。ふざけるな、戻ってくるわけないだろう。
わたしはドアを開けて、弟に駆け寄った。もしかしたら、弟すらもわたしのことを忘れてしまっているのかもしれない。そんな不安がないわけではなかったが、彼の肩に手を触れてみると、結局それは杞憂に終わった。
「あ、お姉ちゃん」
ユウキは、ポカンとした顔をしていた。
「ユウキ? わたしのこと、覚えてるの?」
ユウキは頷いた。むしろわたしが何を言っているのか疑問に思うような、不思議がる表情すら見せたほどだった。
「お姉ちゃんのこと、ママがずっと探してたよ。いなくなっちゃったって。ずっと泣いてたんだよ?」
こっち来て! と、ユウキはわたしの手を引いて家まで連れて行った。
玄関の扉を開くと、懐かしい空気を全身に感じた。ユウキはさらにわたしの手を引っ張り、ママのいるリビングまでわたしを連れて行った。
「ママー! お姉ちゃんが帰ってきたよ!」
リビングに入ると、ソファに腰掛けていたママの瞳がこちらを見つめた。ストレスのせいか少しやつれているように見えるが、それは間違いなくママだった。
わたしはママに駆け寄ろうとした。だが、一瞬早くそれを制止するように、ママがユウキに冷たい口調で言葉を浴びせた。
「誰よ、その子」
最初のコメントを投稿しよう!