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助手席に居たもう一人の警官と目配せして、徳憲は車を降りる。
赤ら顔の男女がしきりに口論し、腕や服を掴んで暴れていた。飲酒による乱暴か?
女性はまだ成人したての純朴そうな娘だった。のちにこれが惜田小夜だと知ることになる。
男の方はジャージ姿の無頼漢で、名を鴨志田恒太と言った。
そう――突撃クレーマーだ。思い出した。奴とは過去に一度会っている。
三年前から外見が変わっていない。
鴨志田は、力ずくで小夜をホテルへ連れ戻そうとしていた。荒事を見過ごすわけにはいかない。徳憲が割って入り、反抗した鴨志田の腕をひねって、体重をかけて路上に押し倒した。
即刻、その場で確保する。
相方の警官が小夜を保護したが、小夜はずっと徳憲だけを凝視していた。迅速かつ鮮やかな捕り物劇に感銘を受けたのだろう。おまけに窮地を救ってくれたのだから、惚れ惚れした様相で見とれるのも当然と言えた。
――その後、ラブホテルの一室から、鴨志田の仲間とおぼしき数名の男女が引っ張り出された。
どうも彼らは、ウェブ動画の交流で知り合って『オフ会』を開いたらしい。
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