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「あいにく今、心理係は忙しくてな。新人しか手が空いていないが、それでも良いか?」
「新人ですか」
「ああ。科捜研はめったに求人しないから、新人と言っても二年くらい勤めているが」
入職二年の新人か。欲を言えば刑事事件に詳しいベテランと相談したかったが、今回は新時代のウェブ文化が密接に絡んでいる。若い新人の方が適任かも知れない。
「では、その方でお願いします」
「ふむ。付いて来たまえ」
穂村管理官は颯爽とデスクから立ち上がるや、白衣を翻して奥へ案内した。
心理係のフロアは文書鑑定科の片隅にあった。ドアを開けて中に入る。文書鑑定に必要な印刷機械やインクの種類を判別する機器、筆圧測定器やら筆跡鑑定資料集やらが所せましと並べられた物陰に、心理係のポリグラフ検査機材が積み重なっていた。
他には心理学に関する蔵書を詰め込んだスチール製の本棚が壁一面を埋め尽くし、数名の心理学研究員が机上のパソコンにかじり付いていた。
たった一名だけ、暇そうにポリグラフ検査機を点検している女性が見て取れる。
「おい忠岡。忠岡悲呂」
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