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勝手に立ち入るのは住居侵入だが、生配信の勢いで踏み込んで行く。多少の荒事も過去に体験しているから、彼に自制心などない。
ワンルームに毛が生えた程度のアパートである。入ってすぐ台所があり、右手にはバストイレ。突撃クレーマーは迷わず、台所の奥にある寝室の敷居をまたいだ。
ガラスの引き戸を、スマホを持っていない方の手で無造作に開放する。
そして――撮影してしまったのだ。
「げ! 何だこりゃ……」
部屋の中は整然としていたが、一種異様でもあった。
――血なまぐさい。
ベッドの上で、初老の女性がうずくまったきり動かない。
「これ、血の臭いか? おいババア、怪我してるのか? え? どういうことだ?」
出血が点々と、ベッドから滴り落ちる。
源泉を辿ってカメラが移動して行くと、うつ伏せに昏倒した女性の背中に、深々と刃物が突き立っていた。
――背後から、心臓部を一突き。
「おいおい、これって死体発見じゃね?」
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