1.草生える

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 捜査班を編成した徳憲は、実ヶ丘警察署の合同捜査本部から現場へ急行した。  アパートは古く、部屋数も少ない。現場は三階にあるが、その階は部屋が二つだけだ。  第一発見者である動画配信者は302号室、死体は301号室に住んでいた。同じ階では彼しか苦情を入れる者が存在しない案配だ。  徳憲が臨場すると、すでに鑑識課が到着していた。他は現場保存していた警官が数名。 「状況は?」 「主任が来るまで、死体(ホトケ)はそのまま残しています。あとは周辺情報ですが、不審者の目撃証言は今の所ありません」 「そりゃ、みんな寝ていただろうしなぁ……」  騒ぎを聞き付けた野次馬も散見されるが、近隣住民の大半は就寝中だ。  徳憲は立入禁止の縄張りをくぐり、アパートの階段を登った。エレベーターがなくて面倒臭い。やっとの思いで三階に上がると、制服警官に見張られている動画配信者が、無愛想な面持ちで廊下に突っ立っていた。  あれが『突撃クレーマー』か。  三〇代後半の中肉中背、いやどちらかと言えば小太りか。坊主頭の丸顔で、冴えない風貌だった。ジャージ姿にサンダル履き、妙に怒り肩で威勢だけは良さそうだ。 「初めまして、警視庁捜査一課の徳憲と申します」
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