1.草生える

9/15

132人が本棚に入れています
本棚に追加
/66ページ
「どもッス」  突撃クレーマーはぞんざいに会釈した。  すでに深夜三時を回っている。だるくて仕方がないのだろう。深夜配信のテンションはどこへやら、まさかの第一発見者になってしまい、興を削がれた雰囲気だ。  徳憲はいったん突撃クレーマーをその場に待たせ、301号室内を見て回った。  部下たちを解き放ち、鑑識課の写真撮影、運び出す押収物を把握する。SSBCにも連絡を取り、近隣に犯人の足跡(アトアシ)がないか探させた。  一通り確認してから、改めて突撃クレーマーに相対する。 「発見したときの状況を教えていただけますか? えーと……」 「鴨志田(かもしだ)恒太(こうた)ッス。ウェブじゃ『突撃クレーマー』って名前ッスけど」  鴨志田はぶっきらぼうに自己紹介した。  事件の捜査協力よりも、先ほどの生配信がどんな反響を呼んでいるのか、再生数が気になるらしい。徳憲と話す間もちらちらとスマートホンを一瞥しており、捜査中は使用を控えるよう注意しなければならなかった。 「鴨志田さんのご職業は?」 「見ての通り、ユーチューバーッスよ」 「ゆーちゅーば? ……ああ」
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!

132人が本棚に入れています
本棚に追加