2.オフパコ

1/15
133人が本棚に入れています
本棚に追加
/66ページ

2.オフパコ

「奇遇ですね! あのときの警察官が、捜査主任になって再会するなんて」  小夜は感激の余り、左手で強く握手を求めた。  可憐な仕草がさらに彼女を眩しく演出する。うら若き乙女が徳憲へすがるように寄り添う様は、彼の人生で一度も経験したことがなかった。 「あー、俺はあんまり記憶にないんですけども」 「そんな! 思い出して下さいよっ。私、今も母の訃報を聞いて心細かったんですけど、徳憲さんに見覚えがあったから救われているんですよ?」  小夜が徳憲にしがみ付いた。密着である。これは徳憲も面食らった。ワイシャツ一丁の胸板へ、淑女の肩がすっぽりと収まる。双丘の柔らかな感触が徳憲に張り付いて、たまらず忘我しそうになった。  気が付けば周囲の捜査官や鑑識たちが、何事かと遠巻きに眺めている。 「散れ散れっ! 見世物じゃないぞ」  徳憲は咄嗟に右手で払った。左手は小夜に握手されたままだ。それでもなかなか人目を払拭できなかったし、部下たちからは後ろ指さされる醜態だ。 「徳憲さんは、私にとって王子様も同然ですね」
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!