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2.オフパコ
「奇遇ですね! あのときの警察官が、捜査主任になって再会するなんて」
小夜は感激の余り、左手で強く握手を求めた。
可憐な仕草がさらに彼女を眩しく演出する。うら若き乙女が徳憲へすがるように寄り添う様は、彼の人生で一度も経験したことがなかった。
「あー、俺はあんまり記憶にないんですけども」
「そんな! 思い出して下さいよっ。私、今も母の訃報を聞いて心細かったんですけど、徳憲さんに見覚えがあったから救われているんですよ?」
小夜が徳憲にしがみ付いた。密着である。これは徳憲も面食らった。ワイシャツ一丁の胸板へ、淑女の肩がすっぽりと収まる。双丘の柔らかな感触が徳憲に張り付いて、たまらず忘我しそうになった。
気が付けば周囲の捜査官や鑑識たちが、何事かと遠巻きに眺めている。
「散れ散れっ! 見世物じゃないぞ」
徳憲は咄嗟に右手で払った。左手は小夜に握手されたままだ。それでもなかなか人目を払拭できなかったし、部下たちからは後ろ指さされる醜態だ。
「徳憲さんは、私にとって王子様も同然ですね」
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