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4.パワーワード
――私と付き合って下さい。
まさかの爆弾発言だった。
あれから一晩が過ぎ、実ヶ丘警察署で仮眠を取った徳憲は、目が覚めたあとも鮮明に覚えている小夜の懇願に、ほっと胸を撫で下ろした。
夢ではないのだ。自分の頬をつねるなどというベタな真似をするまでもない。
徳憲は――愛の告白をされたのだ。
(俺のことを好いてくれる女性が居るなんて……しかもあんな若くて清楚な子が!)
起床しているのに夢心地だった。殺風景な署内も景色が違って見える。総天然色だ。
これまでの人生、徳憲は色恋沙汰に疎かった。仕事一辺倒でプライベートを殺して来たのは前述した通りだが、当然ながら出会いの機会などなく、このまま独身で生涯を終えると考えていた。
ところが、降って湧いたラブコール。
しかも殺人事件がきっかけで、だ。
警察らしいと言えばらしいが、捜査対象の異性に手を出すのは公私混同に取られかねない。しばらくは他言無用にしておくべきだろう。
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