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「……帰ろう」
そういえばなぜ自分は町中などに出て来たのだろう。今一番、自分には相応しくない場所ではないか。
「美咲……」
覚えず、自分の唇が、失った人の名前を呼ぶ。
再会など、あり得ない。あり得ないのだが。もしまた会えたのならば、その時は――。
どうするというのか。
いや、どうもしないのだろう。結局、そこまでの執念は自分にはなかった。それはきっと彼女も同じ。ただ、もう一目。どうなるというものでもないだろうが、もう一目会えたなら。
「もう一度、俺は君の元へ……」
それは、叶わぬ願い。決して、報われぬ想い――。
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