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僕は村の男4、5人と村長によって馬車に入れられ帰らずの森の祠に連れていかれた。
馬車がゴトゴトと音を立てながら走っている。
中心部付近になって空気が悪くなってきた。そう思っていた時、獣の唸り声であろう音が聞こえた…。
村長「まずいぞ、中心部にいる獣なんぞに襲われたらわしらの命はないぞ…!」
村長が声を潜めてそういうと、みな息をひそめるようにして少し移動スピードを上げた。
しかし、相手は厳しい自然の中生き抜いてきた者達だ。
僕たちの気配に気づいてしまった。
そう思ったのも一瞬で、四つん這いの獣は僕たちのほうに勢いよく襲い掛かってきた。
「ガァ゛―!!」
村人「1.2.3…8匹いるぞ!!」
村人「に、逃げなきゃ、食い殺される!!」
村長と村人は馬車なんてお構いなしに我先にと獣たちから逃げようとした。
そこに一匹の獣が襲い掛かった。
獣が襲い掛かった先は村長だった。
しかし、人間というものは醜い、村長は自分が食われそうになったからと隣を走っていた村人を獣のほうに突き飛ばしたのだ。
僕は唖然とその光景を眺めていた。
僕の目には、痛い痛いと泣き叫び腕をもがれ肩を食いちぎられ、生きたまま獣の餌と化した人間の姿と、それを青ざめた顔をして見てから一目散に逃げた人間たちの姿とそれを追う4頭の獣だった。
そうしてどのくらい眺めていただろう。
僕は近くで聞こえるけものの唸り声でふと我に返った。
「あ、ぁあう」(僕も逃げなきゃ食われる)
そう思うとカタカタと震える足に力を入れて立ち上がりすぐに走り出した。
(逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げなきゃ!この場から早く!)
そんな僕を2頭の獣が追いかけてくる。
僕は必死に走った。
木の枝に服をひっかけても、土に足を取られても、ボロボロになりながらも走って走って走って走って…ただただがむしゃらに走った。
でも、やっぱり獣のほうがずっと足が速くて、追いつかれてしまった。
獣は僕に向かって牙をむいた。
肩をかまれた。
いや、かまれたという言葉は適切ではないのかもしれない。
なぜなら、僕の肩は肉を引きちぎられて骨が見えてしまっていたのだから。
痛い…肩が…痛い痛い痛い痛い!
(逃げなきゃ…こんなところで、こんな死に方したくない!こんなところで死にたくない!!)
そこで、初めて僕は死に対する恐怖と生きたいと思う気持ちが芽生えた。
僕はがむしゃらに腕を振った。
そんな僕の腕が獣たちの目に当たった。
一瞬ひるんだすきを見て僕はまた走った。
死にたくない、生きたい、ただその一心で。
しかし、走った先は崖だった…崖に気づかなかった僕は走り続けてしまった。
そして当たり前のように僕の足は空を蹴った。
ドサッ!!
頭が痛い。
そこで僕の意識は闇へとさらわれていった。
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