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Epilogue.
「あれ?なんでこんなとこに桃色のピンが落ちてんだろ?さっき僕が落としたのかなぁ。」
少年はルーレットの上に落ちていたピンに気付く。
片付けようとルーレットに手を伸ばすと、中をコロコロとピンが転がってしまう。
まるで自分の手から逃げる様な動きに、少年は慌ててピンを捕まえた。
「あぶない、あぶない。無くすところだった。ちっちゃい部品が多いから大事にしないとな。」
少年はルーレットの溝に入ってしまったピンを器用に取り出すと、丁寧に箱にしまった。
「父さん、また来年やるからね!次こそ僕が勝つ!」
「次は正月かしらね。今度こそ転落人生ばかりの汚名を晴らしてやるわ!」
「愛子さんはいつも離婚しますよね。離婚マスなんて一つしかないのに。そしてそこからの転落人生…。ぶくく、なんか呪われてるんじゃないですか?」
「あんたこそ一回も結婚したことないじゃない!」
「お前らある意味すげーよな。普通そうゆーもんは確率で、何度も続くなんて事は起きない筈なんだがなぁ〜。」
カカカと無精髭の男が笑って言った。
「しっかし、この箱もボロボロになったなぁ。」
ボードゲームの全てをきっちりと箱の中に片付けながら、感慨に耽るような声音で無性髭が言う。
「中身がそこまで汚くなってねーのは奇跡みたいなもんだよなぁ。」
そう言いながら、よっこらせ、と立ち上がる。
…ぶっきらぼうな印象ですが、丁寧に箱を運ぶのは子供の頃から変わりませんね。
パタンと音を立てて、桐箪笥の中に丁寧に仕舞われる。
盆と正月になると親戚が集まって、こうして暇な皆でボードゲームに興じるのは、無精髭の男が其れこそ寝小便等をしていた頃からのこと。
わたくしが生まれたのも、確か、その頃だったような。
…おや?
そうですか。あなたも。
…さぁて、耳を澄ましてみてください。
箱の中から、小さく、でも賑々しい声が聞こえてくるでしょう?
今宵もまた新しい神子が生まれました。
この桐箪笥の中も、随分と賑やかになったものです…。
わたくしが生まれたころはまだ、ほんの数人の神子たちしかおりませんでしたのに。
それぞれ丁寧に仕舞われた小箱から、ぞろぞろと小さな神たちが出てきては、周りのものと思い思いの話に興じ始める。
どこから取り出したのか、酒などを出して酌み交わす神たちも。
どんちゃん騒ぎが始まりそうな中、老執事はふと視界の端に映ったものに興味を惹かれて目を向ける。
老執事から目と鼻の先で、青いピンに手を引かれて、小さな箱から先程生まれたばかりの桃色のピンがおずおずと出てくるところだった。
そうして二人は目を合わせて頰を赤らめると、互いに小さく微笑みあう。
老執事と女神は目を細めて賑やかしい背景と新しい恋物語を眺めた。
※終わり※
ルーレットを出したい目で止めるのは狙っても中々難しいけれど、たまに出来ることもある(軽く回すとか。←あれ、これってズル?)。
令和版人生ゲームはなんと、金もうけではなくフォロワー数を集めるらしいという斬新さ…時代は変わりますね。
タイトルは、それだけ書いてあるとアレ?この漢字なんて読むっけ?と思うけれど、中身読むと「あぁ、これか」ってわかる感じにしたくて、省略してみました。(読める人は最初からなんの疑問もなく読めてしまう…笑)
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