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cace.1 僕の場合
僕は身一つで始まりの地に立つ。
これから、僕の新しい人生が始まる。
周りを見渡すと、幾人かの人達が僕と同じように身一つでキョロキョロと辺りを見回している。
おや、あの子は見学だろうか。
今さっき初めて見た、可愛い女の子。
何か考え事をするように、ただぼんやりと行く先を見ていた。
僕達に用意されているのは、少しレトロな車が一台ずつ。
あとは幾ばくかのお金。
ただ、それだけ。
僕には車は運転できないけれど、この車は僕が運転しなくったってちゃんと動くらしい。
事故の心配だってない。
僕は安心して車の運転席に乗り込んだ。
案内人の老執事が、僕等に幾つかの道を示している。
しかし、僕等にルートの選択権はない。
老執事に願いを伝えてみるも、上手いこと進みたい道に進めることもあれば、進めないこともある。
彼はあくまでサポートをしてくれるものの、僕等の願いを叶えてくれる程の権限は持ってないという事なのだろう。
それでも僕等は、彼に願いを伝え続ける事しか出来ない。
この車は、僕等の意思に添って動いてはくれないのだ。
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