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不意に新居のチャイムが鳴った。
「響花! 遊びに来たよ!」
引っ越した当日に引っ越し祝いと言ってケーキを持ってしーちゃんは現れた。
「わっ、もう片付いてるの!?」
「さっきまでお兄ちゃんが居たから、一緒に片付けてくれた」
「そうなんだ。学校終わったから手伝おうと思って来たのに残念」
「ありがとう。大学はどう?」
「楽しいよ。色んな人が居るから飽きない。それに高校みたいな集団生活でもないし楽かな」
しーちゃんは話しながらもテキパキとケーキを箱から出している。
「私も来年通えるように頑張るよ」
「響花なら大丈夫でしょ。私でも受かったんだから」
「そんな事無いよ。私来年は文学部を受けようと思うの」
「え、経済学部じゃなかったっけ?」
「経済学部は将来的に役に立つかなって、そういう下心で受けたの。あんまり考える時間もなかったしとりあえずで。でもこうして考える時間が出来て、そういう考え辞めようって思ったの。好きな事しようって。やっぱり私物語が好きなんだって思った。色々な文学に触れたいって思った。それがどう役に立つとかもう考えなくてもいいんじゃないかって思ったの。自分が好きな事を探求したい。きっと両親は納得してくれないだろうけど、もういいかって思えるようになった」
「自分の好きな事じゃないと続かないよ? いいじゃない! ほら、大学は人生の夏休みだっていうくらいなんだから、好きな事すればいいんじゃない? またその間に考えればいいんだよ! 大学だって転学も出来るし、学んだ事とは全く関係ない職に就いている人だって多い。なにも今決めたことが人生の全てじゃないよ。それに文学部だったら小説家とか目指せるのかな? 夢のある仕事じゃん! あ、絵本作家とかもいいよね!」
「しーちゃんはやっぱりすごいな。私の悩みなんてすぐに解決してくれる」
「そうかな? 響花は昔から考え過ぎなんだよ。人生どうにでもなるって! 人生は冒険なんだからチャレンジしなきゃ!」
本当しーちゃんらしいな。自分で切り開いていく、それがしーちゃんだ。待っていたって王子様は現れない。王子様を見つけたいなら自分で動かなきゃ。私はしーちゃんにそう教えてもらった。
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