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私が目を覚ました部屋から続く石造りの階段は途方もなく長い物だった。降りても降りても階段は無数に続くように感じた。降りている筈なのにずっと同じ場所に居るように思えた。窓も他の部屋も一切無く、吹き抜けの天井から注ぐ太陽だけが灯りになっていた。天井を見上げても途方もなくて遠ざかっているとは思えなかったのだ。
一歩踏み出す度に舞い上がる埃に、ここはもう何年も使われていないのだと理解した。私は茶色の制服が汚れる事を気にしながら、出来る限り埃を立てないようにそっと歩いた。
それでも日に照らされた薄暗い空間に埃は舞い、私は腕で口を押えながら降りたのだ。所々に白ウサギだろう足跡を見つけてほっとした。
足が棒になりそうになった頃、下から光が差し込んでいるのが見えた。
ようやく辿り着いた出口に胸はバクバクと大きく高鳴った。不安だった。薄暗く変わらない景色をずっと見続けなければいけないのかと思いかけていた。私はその光に希望を感じ、小走りで残りの階段を駆け下りたのだった。
扉を抜け外に出て、数時間ぶりに浴びた太陽に涙が出そうになった。長い長い石の階段からようやく解放されたのだ。嬉しくて私の頬は勝手に緩んでいた。だけどそんな緩みも束の間。正気に戻って私は愕然とした。
階段の終着点の扉から出たそこには見覚えの無い景色があった。そこはおそらく庭だ。伸び放題の草木からは月日の経過を感じた。綺麗に手入れをされていればその庭は何処かの大きなお屋敷の庭園と言っても過言ではなかった。庭園なんて近くの植物園でしか見たことは無いけれど、それよりも規模は大きく噴水も置かれていた。もちろん水は出ていないなかった。近づいて見たけど干からびていた。
その庭だった場所は荒れていたが黄色や白、ピンクのバラだけはそれでも綺麗に咲き誇っていたのだ。それと妙にとげとげしい細い木々や蔦がそこら中に伸びていた。普通に危ない。
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