第12話 夏祭り

1/1
前へ
/16ページ
次へ

第12話 夏祭り

 サツキを背中に背負いユウタの待つ八代(やしろ)神社の一本杉へと向かった僕は、神社の階段を一段いちだん登って行った。するとサツキは申し訳なさそうに僕にこう言ったのだ。 「ハヤトくん ごめんね、重くない?」  サツキがこう言うと、僕はサツキに向かって、こう言い返した。 「大丈夫だよ、サツキ。あんず(あめ)、ご馳走(ちそう)出来なかったし…」  こう僕はサツキに答えた。その言葉を聴いたサツキは、僕の背中の背後から僕をギュッと(にぎ)りしめたのであった。この時、僕はサツキに何も言わなかったが、自分のサツキに対する感情を自分で確認する事が出来たのだ。  こうして僕は息を切らし、階段の上まで登ったのであった。するとサツキは僕に向かって、こう言った。 「ありがとうハヤトくん、大丈夫?」  サツキは僕に申し訳なさそうに、こう聞いたのだ。この時、僕はサツキに笑顔を作って、こう答えた。 「大丈夫だよ、サツキ。昔、サツキをよく背負ってたから…」  こう僕がサツキに言うと、サツキも(うれ)しそうに微笑(ほほえ)んだのだ。そして二人は(しばら)八代(やしろ)神社の階段の上で昔の頃を思い起こし、見つめ合っていたのだった。 つづく…
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加