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「冗談に、しないでください……! 先生、僕と……キスして――」
その後の言葉は継げなかった。先生の唇で口を塞がれてしまったから。
押し付けられた先生の唇の感触。頭の後ろに回された先生の手に強く引き寄せられる。しかし甘い感覚を味わう時間はほんの少しだった。
突然ぬるりとしたものが口の中に侵入してきて、僕は驚いて身を引いたが、頭を抱えられているので逃げられない。
先生の舌が僕の上顎を舐めあげると、背筋がぞくぞくして変な感じがするのにやめて欲しくないという複雑な感情が渦巻き、堪らない気分になった。
舌を絡み取られ、息もまともにできなくなると、溺れそうになって助けを求めるように先生の白衣を掴んだ。もう何も考えられない。このまま窒息死したとしても、僕は構わないだろう。それぐらいに、僕は先生とのキスに夢中になっていた。
でも永遠ではなかった。ゆっくりと唇が離れる。艶かしく唾液が糸を引いていて、僕は恍惚として先生の顔を見上げた。
「キスだけでいいのか? キスの次は……どうする?」
「……したい、です」
僕の答えを聞くと悪辣な笑みを浮かべて、シャツの上から僕の胸を撫でた。
「んっ……」
胸の突起を指先で撫でられて、思わず声が漏れる。自分の口からこんな声が出るとは思わず、手の甲で口を押さえた。先生はふっと息を漏らして僕の腿の付け根辺りに視線を落とした。
「そうだろうな。キスだけでこんなになるんだもんな?」
先生の視線の先を追って自分が今どういう状態なのかを知った。下着とスラックス越しでも分かるくらいその中心が膨らんでいる。
一気に羞恥心に苛まれて両手で股間を隠すと、先生が声を上げて笑った。そして、自分の椅子に座ると、脇机の上の白紙の答案用紙を指でとんとんと叩く。
「エロいことばっか考えてねえで、やることやれよ」
「……はい……すみません」
先生の声色や言葉遣いが急にぞんざいになったことが気になったが、それが観月脩という人間の本来の姿なのだろう。
何とか気を落ち着けて机に向かい、一つ一つ問題の回答を記入する。簡単な内容だったので、三十分掛からずに解き終わった。先生は答案を横から取り上げると、そのまま採点を始めた。
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