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先生に口を塞がれてそのまま店の外に出る。
高校生が居ていい場所ではないことは明白で、僕も自宅を出る時できるだけ大学生に見えるような恰好――紺色のシャツチェスター、ロング丈の重ね着風Tシャツ、黒のスキニーパンツ――を選んできた。
しかし今まで「先生」としか呼んだことが無い人を急に名前で呼ぶという機転を利かせることはできなかった。
「ついてこい」
言われるまま、僕は先生の斜め後ろをついていく。店の脇にある怪しげな細い道を抜けると、正面にピンク色の電飾で「HOTEL」と書かれ、建物全体がライトアップされた目立つ建物――あまり綺麗そうに見えない――が聳え立っていた。
「早く来いよ」
一瞬気後れしたが、先生の少し苛立った表情に、慌てて後について建物に入っていく。
外観から想像していたホテルは薄暗いイメージだったが、改装したばかりなのか、モノトーンでシンプルなデザインの雰囲気の良いロビーで、少し緊張が解れる。
ロビーにはホテルの客室が表示されたパネルがあって、先生はその中から適当に空いている「305号室」を選ぶと、奥にあるエレベーターに向かう。受付をしなくてもいいのだろうかと思いながら、ちょうど降りてきていたエレベーターに一緒に乗り込んだ。
三階で止まって扉が開く。フロアの一番奥にあった部屋のドアを開けて、「オートロックだから」と言って僕を先に入らせた。
部屋の中はシックな、ロビーのように床、壁、ベッドがモノトーンで揃えられた小綺麗な内装だった。
「なに入り口でぼーっとしてんだよ。さっさとシャワー浴びるぞ。一時間コースの予定なんだからな」
「は、はい……すみません」
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