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「もういいだろ。恋人同士でもあるまいし……くだらねえ」
――くだらない。それは正しく、僕と先生の関係のことを言い表していた。
と、先生は足元に転がっていた僕の服を拾い集めて、茫然としている僕に、投げつけるようにして放った。
「早く着替えろ」
先生は服に着替えながら、動かない僕を睨み付ける。その苛立った先生の様子に我に返ってベッドから降り、急いで服を着た。
僕が着替え終わったのを見て先生は精算を済ませると、そのまま真っ直ぐにドアに向かう。怒らせてしまったことを後悔しながら、その背を追い掛けた。
「お前、エレベーター乗るな」
「え……?」
先生は舌打ちをして、すぐに来たエレベーターに先生は独りで乗り込む。
「終わりってこと。分かれよ」
頭が真っ白になっている僕を置いて、エレベーターのドアが閉まる。
――終わり。そう、言われた。
いつか来るかもしれないと思っていた。先生の気持ち一つで、この関係は簡単に壊れてしまうと分かっていた。
でも、好きだから、どうしようもなく好きだから。いつか観月先生の気持ちを変えられる日が来ると、盲目的に信じた。
視界が歪み、涙がぽろぽろと零れ落ちる。僕は先生にとって、過去の想い人よりも遠い存在だったのだ。
「えっと……大丈夫?」
僕の顔を覗き込む人と複数の人の気配に気付いて顔を上げる。エレベーターの前に立ち塞がっていた僕を困ったような、気遣うような表情で三人の男性が囲んでいた。
「相方に置いてかれちゃった?」
髪の長い小柄の男性が言う。僕は黙って俯いた。
「何それ、最悪じゃん! 俺なら絶対許さねえわ!」
僕と同じくらいの身長で体格のいい、茶色の短髪の男性がちょっと怒ったように言うと、細身の男性が「そうだ」と短髪の男性の肩を叩く。
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