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「……貴方の携帯電話に、沢山猥褻なサイトを閲覧した履歴があったわ。けど、やり取りをしていたのはこの謙っていう男だけ。考えたくないけど、貴方……この男の言うように、不特定多数の相手とそういうことをしていたんじゃないでしょうね……?」
「し、してないよ……! 僕は……」
ただ好きな人とセックスをしただけだ。そして好きな人に、愛されたかっただけだ。
しかし、同性愛者の性行為を汚らわしいと思っている母に、そんな気持ちを解ってもらえるとは思わなかった。
「じゃあ誰? 言えないような人なの? 店長って誰のことを言ってるの? 学校内の誰かのこと?」
僕は顔を強張らせて、目を逸らした。僕の肩を痛いほどの力で掴んでいた母の手が脱力するように離れる。
「……学校の人なのね。もしかして……先生?」
びくっと微かに肩が震えた。母は僕の顔色の変化や反応を見逃さなかっただろう。
きっと、僕が「人身事故で」遅く帰ってきた時から疑っていたのだ。そして、その疑いが確信となった今、真実を白日の下に晒すまで、絶対に僕を許しはしない。
母は自分のスマホを操作して耳に当てる。コール音が聞こえ、僕は背中が冷たくなっていくのを感じた。
「何、してるの……?」
「学校に電話して、今から行くって連絡するのよ。そして貴方に淫行した男を特定して、警察に突き出すわ」
母の台詞に、僕は母の腕を咄嗟に掴んだ。その拍子にスマホが床に落ちる。誰かが出たのか、声が響いた。
驚いて固まっている母の代わりに父がスマホを取って操作する。画面には無数のひびが入っていた。
「電話……切ったわね? あなたどういう権限があってそんなこと――」
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