第四話 関係の終わり

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「警察沙汰になれば身内の恥を晒すことになる。そんなことをさせるわけにはいかない」  ――身内の恥。  それは淫らな行為をしたことに対してなのか、それとも僕が同性愛者であるということに対してなのか。  どちらにしろ、父は僕をもう、見放している。 「一温」  父の冷たい声が、頬をぴしゃりと打つ。僕を見る父の眼が恐ろしくて、僕は父の顔を見ることが出来なかった。 「今日から学校に行かなくていい。そして四月からの転校が間に合うか分からないが、別の学校に転校させる」  その父の言葉は、僕がもう二度と先生に会えなくなることを冷酷に宣告していた。  茫然として、物言えぬ僕の沈黙を同意と受け取った様子の父は、母に「後のことは頼んだぞ」と言って部屋を出て行き、その後玄関のドアが閉まる音がした。 「……あの人はいつも私に押し付けて……嫌になるわ」  母の深い溜息がリビングに満たされていくように、重い空気が圧し掛かる。 「貴方には、転校するまで外出を禁止します。これ以上、余計な仕事を増やされても困るから」  そう一方的に告げると、母はリビングを出て行った。きっと、これから仕事に行く準備をするのだろう。  僕は力なく膝を折り、地べたに座り込んだ。僕の一方的な恋は、ここで完全に終わりを迎えたのだ。  ――そう、終わったのだ、何もかも。  涙は出なかった。ただ虚しい――虚しいだけ。  ――もしあの時、僕が先生の過去を詮索するような真似をしなければ、先生との関係は続いていたのだろうか。  そんな「もしも」を考えてしまうのは、こんな状況になってもまだ先生のことが好きだからなのだろう。
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