第二話 初恋

4/8

128人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ
 ゴールデンウィークは塾と図書館と家の往復で終わった。ただ学校が早く始まるといいと思いながら。この初めての感情に、僕は翻弄されていた。  学校が始まると化学の授業が楽しみになった。観月先生が普段見せる姿は、彼の本当の姿ではないけれど、その仕草や眼鏡の向こうの視線の先に、僕が映る瞬間に一喜一憂する。淡々と授業を受けるだけの色褪せた青春に、彩りが生まれた。  しかし、観月先生のことを好きな女子達と同じように、僕は先生を囲んで歩くような真似はできなかった。男が男を好きなのは、変だから。  休みの間、色々調べて自分が同性愛者であるということを認識した。今まで一度も女性に興味を持ったことがないからだ。試しに無修正のアダルト動画まで確認したけれど、全く反応しないまま終わった。興味があったとすれば、女性の男性器を受け入れるために理想的な女性器の構造くらいだ。  恐らくそのせいだと思うけれど、その日から度々僕が女役で眼鏡を掛けていない先生に組み敷かれている淫夢を見た。僕は女性の身体の構造はしていないはずだけれど、すんなりと彼の雄を受け入れる。先生の目がまっすぐに僕を見詰めて「風岡君、気持ちいい?」と微笑んだ。僕は先生の首に腕を回して「気持ちいいです」と嬌声を上げながら腰を振った。  朝目覚めると、ボクサーパンツの色が変わるくらいの酷い有り様でうんざりした。けれど、この性への興味は加速して、空いた時間に男同士のセックスの仕方を調べたり、動画を見るようになり、段々と夢も具体的になってきて僕の妄想の種になった。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

128人が本棚に入れています
本棚に追加